◆ 毎回、これからの変化のきっかけにつながるかもしれない保育に関する様々な事柄を取り上げながら、独自の視点から分析します。
小学生の女の子にとって「大人になったらなりたいもの」のベスト3は、「パティシエ(お菓子屋さん)」「保育園・幼稚園の先生」「看護師さん」が長らく常連でした。しかし、直近の調査では、「保育園・幼稚園の先生」が遂にベストテン圏外に消えてしまいました。
保育者の人材難が叫ばれ続け、近年は処遇改善や配置改善など一定の改善が図られてきましたが、残念ながら保育者に対するマイナスイメージを払拭するまでには至っていないようです。
これは、第一生命保険株式会社が、全国の小中高校生3000人を対象にインターネットで行った調査結果から分かったものです。同社は、この調査を1989年から毎年行っており、今回で36回目となります。
それによると、小学生の女の子(小学校3~6年生)が「大人になったらなりたいもの」に挙げたのは、第1位が「パティシエ」、第2位が「会社員」、第3位が「漫画家、イラストレーター」でした。第4位から第10位までは、「医師」「歌手、アイドル」「看護師」「教師、教員」「美容師、ヘアメイクアーティスト」「公務員」「料理人、シェフ」となっていました。
「保育園・幼稚園の先生」は、ベストテンの圏外となってしまいました。しかし、1989年から2021年までの推移をみると、1位が3回、2位が20回、3位が7回、4位が1回、5位が2回となっており、非常に人気の高い職業だったことが分かります。
近年の状況をみると、2021年の3位を最後にベスト3から外れ、2022年に6位、2023年に7位、そして今回(2024年)はベスト10からも消えてしまいました。
今回の調査では、子どもの保護者にも「子どもの頃に大人になったらなりたかった職業」を聞いています。それによると、母親の場合、2位の「会社員」、3位の「パティシエ」を引き離して、「幼稚園の先生、保育士」が第1位となっていました。子どもの母親にとって当時なりたい職業であったにもかかわらず、その子どもはなりたいと思わないという皮肉な結果と言えます。
ちなみに、「看護師」は4位でしたが、そう回答した人の中には実際に医療関係の仕事に就いている人もいて、その子どもも母親に憧れて「看護師」を志しているという回答もありました。同調査の報告書では、「身近な親の働く姿を、子どもたちがしっかりと見つめていることがよく分かるエピソードだと思う」旨のコメントをしています。言い換えると、「保育園・幼稚園の先生」というのは、仮に母親がそうであったとしても憧れの職業とは見られていないのかもしれません。
小学生の女の子にとって、ベストテンに挙がった「パティシエ」や「漫画家、イラストレーター」は憧れの職業、「会社員」「公務員」は現実的かつ堅実な職業、「看護師」「教師、教員」は社会的に大切な職業と捉えているように思われます。そう考えると、「幼稚園の先生、保育士」は憧れの職業でもなく、現実的かつ堅実な職業でもなく、社会的に大切な職業でもないと受け止められていることになります。
処遇や配置の改善、さらには働きやすい職場環境など、近年は様々な条件・環境の改善が進み、他の職業と比べても大きく見劣りするようなことはありません。それにもかかわらず、子どもたちにとって保育者が魅力ある職業と捉えられていないことが浮き彫りになったと言えます。
翻って、保育者養成校の不人気な状況をみるにつけ、小中高校から養成校に至る段階においても、保育者は魅力ある職業であり、社会的に意義の高い仕事であるというプラスイメージをどう持ってもらうか、今後の重要な課題ではないかと思います。
なお、同調査によると、中学生女子の第8位に「保育園・幼稚園の先生」が挙がっていました。この5年間、常に中学生女子のベストテンに入っていることを考えると、まだ微かな希望を持つことができます。この希望の灯が点っているうちに、何とか有効な手立てを講じてほしいものです。
★「保育ナビWebライブラリー」保育のいまがわかる!Webコラム 吉田正幸の保育ニュースのたまご vol.123(5月1日号)で配信した記事です。
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