◆ 毎回、これからの変化のきっかけにつながるかもしれない保育に関する様々な事柄を取り上げながら、独自の視点から分析します。
ChatGPTをはじめとする生成AIをめぐる動きが加速しています。ニュース等でも最新の状況が連日のように報じられています。仕事柄、日常的にパソコンやインターネットに触れ、文書作成やメール送受信、ネット検索などのアプリケーションを使っていると、MicrosoftのCopilotやGoogleのGemini、Adobeの Fireflyなど、数多くの生成AIを利用するよう促されます。
保育分野も例外ではありません。三菱UFJリサーチ&コンサルティングがまとめた「保育施設等におけるICT導入状況等に関する調査研究事業」報告書によると、8割を超える教育・保育施設で何らかのICTを導入しています。
ただ、実際に日々の保育業務で活用しているICT機能を見ると、「園児の登園及び降園の管理に関する機能」68%、「保護者との連絡に関する機能」68%、「保育に係る計画 記録に関する機能」48%、「指導要録 児童票の作成に関する機能」37%、「職員間の連絡に関する機能」37%、「職員の出退勤管理に関する機能」36%といった具合で、必ずしも十分に使いこなせているわけではありません。
しかし、経営情報の見える化(「ここdeサーチ」を使って収益・費⽤、職員給与状況等の経営情報を報告・届出)や、こども誰でも通園制度に関する総合的な支援システムの運用が既に始まっているほか、ここ数年以内に保育現場・自治体業務のワンスオンリー化、保活ワンストップシステムなどが実装されていく予定です。これらに関するニュースも、しばしば目にし、耳にすることでしょう。
こうしたICTやDX、生成AIの世界とどう向き合って、教育・保育に関する業務の効率化・高度化をどう図っていくかが問われています。なお、本稿では、ICTや生成AIも含めた多様かつ高度なデジタル活用を含めてDXと捉えたいと思います。
誤解しないでいただきたいのは、保育という営みそのものは極めて人間くさい営みで、良い意味でアナログな世界だということです。その特性を大切にしつつ、一方で保育に係る園務や業務は効率化・高度化する必要があります。そのためには保育DXに積極的に取り組むことが不可欠な時代を迎えた、と受け止めなければなりません。
明治の大昔、電線を通じて声が届くなら荷物も届くだろうと、電線に風呂敷包みをぶら下げた人がいたという笑い話がありました(真偽のほどは別として)。FAXが普及し始めた時、書類をFAXした後、ちゃんと届いたかどうか相手に電話をかけたという話は、実話として聞き及んでいます。
さすがにDXの分野では、そこまで極端な話を耳にすることはありませんが、人の温もりやアナログ的な良さを大切にしてきた保育の世界にあっては、ともすればデジタル化に対する誤解や先入観、思い込みが先行して、必要以上にDX不要論に固執する向きも見られます。
けれども、保育DXの大きな波は、否応なしに押し寄せてきます。大切なことは、保育人材の確保・定着を図ること、保育者の専門性を高めること、保育の質を上げること、ひいては保育の魅力を向上させることです。そのための有力な手段として保育DXをどう活かすかが問われています。
DXやデジタル化に無関心であったり、遠ざけたりする間に、保育や保育を取り巻く世界は一変していきます。
例えば、「キーボードで文字を打つより手書きのほうが簡単で早い」かもしれませんが、「手書きより音声で入力するほうがもっと楽で早い」し、さらには「音声で入力したものを自動でポイントを要約したほうが効果的でわかりやすい」という時代が来ています。
もちろんDXを過信してはいけませんが、この動きを無視していれば、やがて取り残されていくことになります。「見る前に飛べ」ではありませんが、まずはチャレンジして、試行錯誤しながら、少しずつ成果を実感していったらいかがでしょうか。
★「保育ナビWebライブラリー」保育のいまがわかる!Webコラム 吉田正幸の保育ニュースのたまご vol.134(10月15日号)で配信した記事です。
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