◆ 毎回、これからの変化のきっかけにつながるかもしれない保育に関する様々な事柄を取り上げながら、独自の視点から分析します。
政府はこのほど、高市総理が本部長を務める「人口戦略本部」を設置し、第1回会合を開きました。同本部の目的は、「こども・子育て政策を含む人口減少対策を総合的に推進する」ことだとされています。
ここで目指す人口減少対策というのは、全世代型社会保障のあり方や、教育・保育を含む子ども・子育て支援政策、地方自治のあり方、外国人の受け入れを含む共生社会のあり方など広範囲に及ぶと考えられます。
これに関して高市総理は、会議後のコメントで「我が国最大の問題は人口減少であるとの認識に立ち、若者や女性を含む誰もが、自ら選んだ地域で住み続けられる社会を実現するため、地域に必要な社会保障サービスの維持、少子化対策の推進、安心して働き、暮らせる地方の生活環境の創生、付加価値創出型の新しい地方経済の創生、外国人材との共生を始めとする人口減少対策」と述べています。
そのため、本部の構成メンバーは、内閣総理大臣が本部長を務め、副本部長に内閣官房長官、全世代型社会保障改革担当大臣、内閣府特命担当大臣(経済財政政策)。本部員にデジタル行財政改革担当大臣、地域未来戦略担当大臣、外国人との秩序ある共生社会推進担当大臣、内閣府特命担当大臣(こども政策 少子化対策 若者活躍 男女共同参画)、その他内閣総理大臣が指名する国務大臣などと、幅広い顔ぶれなっています。
ここで気になるのは、人口減少対策と少子化対策の違いです。これまでは政府は、少子化対策という言葉を主に使ってきました。例えば、1995年度から5年間にわたって展開された「今後の子育て支援のための施策の基本的方向について」、いわゆるエンゼルプランは、わが国最初の総合的な少子化対策だと言われました。その中で、「少子化」という言葉は8回使われていますが、「人口減少」という言葉は1回も使われていません。
記憶に新しいところでは、岸田首相(当時)が2023年1月の年頭記者会見で、「異次元の少子化対策」という言葉を使って、「少子化対策に挑戦する」という決意を表明しました。これを受けて、同年6月には「こども未来戦略方針~次元の異なる少子化対策の実現のための『こども未来戦略』」の策定に向けて~」を策定し、閣議決定しました。
また、昨年10月に石破首相が所信表明演説を行った際には、「少子化とその結果生じる人口減少は、国の根幹にかかわる課題、いわば「静かな有事」」であるとの認識を示し、少子化対策に全力で取り組む姿勢を示しました。
「少子化対策」と「人口減少対策」について明確な定義がなされているわけではありませんが、「少子化」と「人口減少」はどこに力点を置くのかの違いがあるように思われます。単純に言えば、少子化は子どもが少なくなっていくことであり、人口減少は死亡数が出生数を上回ることで人口が減っていくということです。
どちらにも共通していることは、これ以上子どもが減らないように、できれば少しでも増えるようにするという量的な対策です。と同時に、世代間扶養の仕組みである社会保障制度の持続可能性を高めることです。力点に違いがあるとすれば、少子化対策は少子化を招いている要因を取り除くことに比重を置くのに対して、人口減少対策は文字通り人口が減っていっても社会経済が成り立つようにすることに重きを置いていることではないでしょうか。
高市総理のコメントを見ても、「給付と負担の在り方の見直しを含めた社会保障改革」「人口減少に対応した地方自治の在り方」「人口が減少する中でも、医療、子育て、交通、上下水道、行政含む公共部門の必要なサービスの維持・向上が可能となるDX 施策の推進」といった言葉が並んでいます。
ただ、こども政策担当大臣に対してだけは、「少子化・人口減少のトレンドの反転に向けて、こども・子育て支援加速化プランに基づき、子育て支援に係る各種施策を実行に移すとともに、将来的な更なる少子化対策の在り方の検討を進め」るよう求めています。人口減少対策の中の少子化対策という位置づけながら、「将来的な更なる少子化対策の在り方」がどこに向かうのか、関心をもってウォッチしたいと思います。
★「保育ナビWebライブラリー」保育のいまがわかる!Webコラム 吉田正幸の保育ニュースのたまご vol.137(12月1日号)で配信した記事です。
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