◆ 毎回、これからの変化のきっかけにつながるかもしれない保育に関する様々な事柄を取り上げながら、独自の視点から分析します。
こども家庭庁はこのほど、子ども・子育て支援等分科会を開き、その中で「令和8年度予算編成過程で検討する保育所等の公定価格の見直しについて」の考え方が示されました。
それによると、子ども・子育て支援新制度が創設されて10年が経ち、この間、保育者の処遇改善等を行った結果、公定価格に係る予算額は約3倍にまで増えています。
ただ、今後は少子化がさらに進むことから、同庁が2024年12月に示した「保育政策の新たな方向性」を踏まえて、❶ 待機児童対策を中心とした保育の量の拡大から地域のニーズに対応した質の高い保育の確保・充実、❷ 全てのこどもの育ちと子育て家庭を支援する取組の推進に政策の軸を転換、❸ 保育人材の確保・テクノロジーの活用等による業務改善を進めることとしています。
こうした観点から、公定価格についても見直しを行うとして、次のような検討事項を挙げています(一部省略)。
○ 保育士・幼稚園教諭等の処遇改善について
○ 地域区分について
○ 配置改善について
○ その他
・人口減少地域の保育所等における保育機能の確保・強化。
・保育現場におけるテクノロジー活用の推進。
・他の社会保障分野を踏まえた法令等に求められる取組(例:経営情報の公表、安全計画の策定)が行われていない場合の対応。
このうち、処遇改善については、今夏の人事院勧告を踏まえた人件費の単価の見直しが検討される予定で、昨年の人勧より改定率が高くなっているため、普通に考えれば昨年度の10.7%より高くなりそうですが、財政措置の大幅な増額が必要になることから、今の内閣においてどのような補正予算が組まれるのかわかりません。
配置改善に関しては、1歳児や4・5歳児の配置改善が実施されていますが、次なる改善を検討するため現在、保育士等の配置状況の調査が行われているところです。その結果も踏まえ今後の対応を検討するとしています。ただ、配置改善を行っても、そのための保育人材が確保できない施設が少なくないことから、人材確保の問題とセットで考える必要がありそうです。
今年度の見直しを見送った地域区分については、「隣接地域とこれまで以上に区分差が拡大し、保育人材の確保に影響が出るほか、事業運営や保育の質の維持・向上に支障が生じる恐れがあるなど多くの自治体から懸念の声があがっている」ため、人事院勧告による見直し(市町村ごとから都道府県を基本とし、7区分を5区分に見直す)を踏まえつつ、障害や介護など他の社会保障分野の制度との整合性も勘案しながら、引き続き検討していくことになりそうです。
その他の人口減少地域の保育所等における保育機能の確保・強化については、保育所等のダウンサイジングに対応した公定価格のあり方や小規模保育施設等の定員区分の見直し、あるいは保育機能の確保・強化に係るなんらかの加算などが課題になりそうです。
保育現場におけるテクノロジー活用の推進については、ICTや保育DXに対応したなんらかの加算が検討されるかもしれません。
このほか、他の社会保障分野を踏まえた法令等に求められる取り組みのうち、今年度から実施されている経営情報の公表については、報告・届出の義務が課されていることから、その義務を果たさない施設・事業者に対してなんらかの減算調整が行われるかもしれません。
いずれにしても、「量から質」「多機能化」「保育機能の確保・強化」「ICTや保育DX」といったキーワードが、今後の公定価格見直しにおいても大切なポイントになりそうです。
★「保育ナビWebライブラリー」保育のいまがわかる!Webコラム 吉田正幸の保育ニュースのたまご vol.135(11月1日号)で配信した記事です。
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