◆ 毎回、これからの変化のきっかけにつながるかもしれない保育に関する様々な事柄を取り上げながら、独自の視点から分析します。
先ごろ、政府の今年度補正予算案が決まりましたが、このなかにこども家庭庁の「人口減少地域における保育機能確保・強化のためのモデル事業」も含まれています。この事業は、人口減少地域における保育機能をどう維持・確保するかについて調査研究し、具体的な政策立案に役立てようというものです。
この事業は、「人口減少が進む状況において、保育所等における地域の人々も交えた様々な取組について支援するとともに、保育所の多機能化に向けた効果を検証することで、地域インフラとしての保育機能の確保・強化を図る」ことが目的です。
メインとなるモデル事業は、過疎地やそれに準じる地域を抱える市町村において、保育所や認定こども園、小規模保育施設等を対象に❶ 保育機能を強化する取組、❷ 乳幼児期以降のこども・若者を支援する取組、❸ こども・子育て家庭を支援する取組、❹ こども・子育て支援以外の様々な支援の取組、❺ 地域づくりのための取組などを実施するとされています。
そのための経費が来年度概算要求にも盛り込まれていましたが、今年度補正予算案にも組み込むことで、過疎地等における実践的な取り組みだけでなく、「地域ごとのデータ分析を進め、地域によって異なる課題や事情に応じた支援を行っていく」ため、「地域分析に係る支援を行う」モデル事業を行うことになりました。
モデル事業の内容は、「自治体において、将来的な保育ニーズや保育資源、近隣地域や同規模の他地域との比較などを踏まえた地域分析を行うための費用を一部補助し、自治体における地域分析のモデルを構築する」というものです。
この地域分析のモデル事業に関しては、既に今年度の調査研究事業として、「こども・子育て支援の地域分析に関する調査研究」に取り組んでいます。最終的には、全国の自治体が活用できる地域分析ツールを作成し、それを活用することによって市町村担当者が現状の把握や課題の整理を行い、それらを元に保育機能の確保・強化に向けた施策の検討・立案に役立ててもらうことを想定しています。
調査研究事業の取り組みはまだ半ばですが、「地域分類」「現状の把握」「将来見込」「課題整理」という4段階で各市町村の課題の分類・整理を行い、短期的な需給バランスに対応するだけでなく、中長期的な観点から保育提供体制の検討を進めることになっています。
その際、「人口動態・児童数推計および家族類型、利用意向などと保育提供量から需給状況を分析する」ことや、「戦略的な保育提供体制を検討していくために、『年齢別子どもの数』、『施設提供状況』、『保育人材』、『地域資源』の4つを分析軸に現状と見込を整理する」ことを検討しています。
この地域分析ツールは、2030年度から始まる第4期地方版子ども・子育て支援事業計画の策定に活かしてもらうことを想定しています。例えば、地域分析の結果、乳幼児人口がさらに加速して減少することが見込まれ、施設の大幅な供給過剰や定員充足率の低下など、経営状況のさらなる悪化が見込まれる場合、施設の多機能化や統廃合の速やかな検討が必要になります。そうした保育需給の予測・見通しをできるだけ定量的・客観的に把握し、事業計画策定の段階から早期に手が打てるよう活用してもらうことが狙いです。
今回の補正予算案に盛り込まれた「地域分析のためのモデル事業」は、上述した調査研究事業を実践的・モデル的にカバーし、より有効な地域分析ツールの作成に資するものだと言えます。
どこまで役に立つ分析ツールになるかはまだわかりませんが、市町村(特に人口減少地域を抱える中小の市町村)の担当者にとっては、次期事業計画を策定する際の重要な基礎資料になることが期待されます。地方版子ども・子育て会議においても、これを有効活用することによって、効果的・建設的な議論ができるのではないでしょうか。
言い換えれば、自分たちの地域の実情を客観的に見える化し、保育機能の維持や確保につなげる有効な手掛かりが得られることになると考えられます。
★「保育ナビWebライブラリー」保育のいまがわかる!Webコラム 吉田正幸の保育ニュースのたまご vol.138(12月15日号)で配信した記事です。
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