執筆:青山誠
事例:上町しぜんの国保育園
現場の保育者の方たちから「ミーティングの話題はどんなふうに決めたらいいのか」とよく質問され、子どもの心が動いた瞬間を拾うといいですよ、とお答えします。ただ、ミーティングを重ねるうちに、子どもたちからも「これ、ミーティングではなしたい」と言ってくるようになります。保育者の佐久間(くまちゃん)さんのエピソードを見てみましょう。
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人形劇の準備(5歳のYさんが中心になって盛り上がっていた)も飽きてきたかなという夕方の時間。片付けようとしていると、Yさんが紙とペンを持ってすごい勢いで戻ってきた。呆気に取られていると、「ミーティングやるよ!」とYさん。とにかく熱量がすごかった。ホールの絵を描いて、どこでやるのか、お客さんはどこに座るのか、という図を描いている。
Yさん「Yちゃんが、いちばん!きになること。それはね、おきゃくさんがちゃんときてくれるか、ってことなんだよね」
Kさん「ぴんぽんぱんぽん(館内放送)って、しにいけば?」
Yさん「それいいね! それをやるのは、くまちゃん(佐久間)だよ! ばんごうわかる!?」
佐久間「わかんない」
Yさん「ええっ!?……まあそれはべつのおとなにおねがいしよう」
そのうちNさんが戻ってきて、通りすがりのKさんはいなくなる。
Yさん「くまちゃんのこまってることはなに?」
佐久間「んー、どんなお話にするかってことかな」
Yさん「そう、Nちゃんはどんなおはなしがいいの?」
Nさん「やまのぼり」
Yさん「あっ、やまかいたもんね。くまちゃんは『よわむしライオン』やりたいっていってたね。そのふたつにしよう」
Yさん「Nちゃんのこまってることはなに?」
Nさん「うまくできるかってこと……。きょうみたいに、とちゅうでおちちゃったりしたらやだ」(段ボールで作った山が落ちて、後ろに隠れていた子どもやおとなの姿がお客さんから見えてしまった。)
Yさん「ああ! うまくできるかってことねー。あとは?」
佐久間「んー、お客さんがいると緊張するからやだな」
Nさん「だいじょうぶだよ。やまのうしろにかくれてるんだから、みられてないよ」
Yさん「あっ、そうだよねえ」
Yさんは聞いた話を全部、絵で表して描いている。Nさんは字で書いている。
途中その場を離れると、「くまちゃん! ミーティングちゅうなのわすれてない!?」と何度か怒られた。その後も、壊されちゃったらやだ、お腹空いたらどうしよう、だれかが休みだったらどうしよう、など心配なことをたくさん話した。
Nさん「くまちゃんあとは?」
佐久間「んー、あ。今日、人形劇してる途中にNさんが……」
Nさん「おちこんじゃった?」
佐久間「そう。本番も落ち込んだときはどうしたらいいかなって」
Nさん「……おちこまないよ! だいじょうぶ」
そう言って自分のメモに「Nさんがおちこんだときがしんぱい」と綴るNさん。その後、持ち物の話になって、汗をかいた時のタオル、水筒、帽子!? 遠足行くのかい!?と笑ってしまった。そしてYさんのお迎えの時間になって話は終わった。
何か困った時に、子どもから「ミーティングする」という考えになるのが驚いた。日々ミーティングを積み重ねているからだと思った。YさんとNさんが、それぞれ私や相手に話を聞く。それをそのままにするのではなく、自分ごとのようにきちんと受け止めてくれて、一緒に考えてくれる。それってなんてうれしいことなんだろう。(佐久間記)

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ミーティンがYさんにとって、自分のものになっている様子がよくわかります。困った時に相談するということもそうですが、まずは相手に尋ねること、相手が何かを話しだしたらきちんと聞き取ること、もち出された話題をその場にいるみんなでどうしようかと考え合うこと。こうしてだれかの困りごとは、その場にいる「私たちの」問題へとなっていきます。それは佐久間さんが書いているとおり「なんてうれしいこと」でしょうか。
イラスト:ナガタヨシコ(https://www.instagram.com/nagata445)
<編集部より>
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96ページ 26×18㎝
ISBN 978-4-577-81571-7 108-34

