コラム

子どもに生きる、保育者に生きるドキュメンテーションのススメ ~中野区立丸山保育園の実践がドキュメンテーションの新たな地平を拓く~【第2回】    

寄稿/佐藤康富(東京家政大学短期大学部 教授)

3.保育者のウェルビーイング

最初は子どもの姿をよく観察して記録する「保育日誌の園内研修」がスタートだった。

そこから、保育者たちの中に「子どもたちがイキイキ遊んでいる姿を、タイムリーに伝えたい」という思いが膨らみ、写真を使った記録、ドキュメンテーションへの取り組みが始まった。

しかし、いざ始めてみると、「どんな写真がいいのか?」「タイトルはどうするのか?」「クラスだよりとドキュメンテーション、どう違うのか?」等々、疑問だらけ。

そんな時、丸山保育園の何人かの保育者が私の研修会に出会った。私が伝える「ドキュメンテーションを子どもに活かす」という視点に驚き、ドキュメンテーションに深くかかわることとなる。

そして、保育者たちに以下のような変化が見え始めた。

ドキュメンテーションをどう作っていけばよいか手探りであったからこそ、保育者個人の作業でなく、保育者同士の情報共有が不可欠であった。

そこでは、「タイトルのつけ方」「子どものどのような場面を写真で切り取るとよいのか」「紙面のレイアウト・構成はどうすると効果的か」などが話し合われた。

しかしここで、ドキュメンテーションの共通フォーマットを作成して共有することはせず、各自が自由に取り組んだ。

結果的にこのことが、ドキュメンテーションのおもしろさ、工夫する楽しさに、保育者たちを開眼させる近道となった。

子どもの姿をドキュメンテーションにすることに目覚めた保育者は、初めはドキュメンテーションを出すことさえ戸惑いを見せていた。

しかしいつの間にか、子どもの「おもしろい姿」を見つけるやいなや1日に2回出したり、ほかのクラスの子どもの姿を見て、そのドキュメンテーションを作成したりする姿も見え始めた。

そして、ドキュメンテーションを作りたいと思った人が作れるよう、職員間で互いに協力し合うことが、クラスを越えて自然にできるようになった。

なぜこのような変化が生まれたのか。

それは、

に源泉があった。

文字だけのエピソード記録だと文章の上手さが際立つ。しかし、自由な取り組みのドキュメンテーション制作であれば、

など、保育者それぞれの個性が活かされ、互いがそれを尊重し合う姿勢が生まれる。

この姿勢は同僚だけでなく、子どもを見る眼にも活かされることになる。

〈【第3回】につづく〉

協力/中野区立丸山保育園

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