◆ 毎回、これからの変化のきっかけにつながるかもしれない保育に関する様々な事柄を取り上げながら、独自の視点から分析します。
いわゆる「経営情報の見える化」を法的に位置付けるため、2024(令和6)年6月の通常国会で子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律が成立し、今年4月1日から施行されました。これにより、給付を受けるすべての施設・事業者は、処遇改善を含む人件費や職員配置、収支等の経営情報を都道府県に報告・届出しなければなりません。
この経営情報の報告・届出は義務化されており、事業年度の翌年度分から適用されます。報告期限は事業年度終了後5か月以内とされていますので、事業年度が2024(令和6)年度(2024(令和6)年4月1日~2025(令和7)年3月31日)の場合、今年8月末日までに福祉医療機構が管理・運営する「ここdeサーチ」に経営情報等のデータをアップしなければなりません。これを都道府県(市町村経由)が確認したうえで、同じ年度内を目途に公表される予定です。
つまり、ほとんどの施設・事業者は、この夏(8月31日)までに自施設・事業の経営情報をインターネット経由で「ここdeサーチ」に登録する必要があるということです。こども家庭庁に聞くと、すでに経営情報のデータを「ここdeサーチ」にアップした施設が徐々に増えているそうです。
よく考えてみれば、それはそうだと思います。本稿が皆さんの目にとまる頃には、あと1か月ほどで報告・届出の締切りを迎えます。各施設・事業者の方々は、「ここdeサーチ」への入力(報告・届出)は大丈夫でしょうか。
この見える化は、そもそも「処遇改善や配置改善等の検証を踏まえた公定価格の改善を図ることを主たる目的」とするものです。誤解を恐れずに言えば、職員の処遇や配置の改善を各施設でしっかり行っても、それが十分な成果(人材確保、離職防止、全産業平均との格差是正など)につながっていないということが「見える化」されれば、さらなる取り組みの強化、即ち公定価格の改善を図る必要があるという具体的な根拠にできるということです。
加えて、これらの経営情報に関しては、こども家庭庁における経営情報の分析を踏まえた幼児教育・保育政策の企画・立案等の実現や、社会情勢・経営環境の変化を踏まえた的確な支援策の検討などに活用されるほか、子育て家庭や保育士(求職者)等の施設選択・意思決定の支援、施設・事業者の経営分析・改善の促進、研究者による学術研究や政策提言など、幅広く役立ててもらうことも期待しています。
そのため報告を求める情報は、「グルーピングした集計・分析結果の公表」と「個別の施設・事業者単位での公表」の大きく2種類となります。
「グルーピングした集計・分析結果の公表」では、職員1人当たり平均給与や配置状況(基準上と実際の配置の比率、職種別・属性別の構成)、収支差額など。「個別の施設・事業者単位での公表」では、モデル給与(基本給・手当・賞与等の月収・年収の目安など)、人件費比率、職員配置状況(配置加算や地方単独補助の有無なども付記)などとなっています。
これらの経営情報を「ここdeサーチ」に入力するわけですが、例えば給与に関しては、処遇改善等加算の取得状況、全ての職員の勤続年数、賃金などについて入力します。収支状況については、入力済みのExcelデータを取り込むか、テンプレート(ひな形)をダウンロードしてそれを使うか選択したうえでデータをアップします。
ここで詳細を述べることはできませんが、入力ミス等をサポートする機能がついているとはいえ、なかなか大変な作業であることは確かです。筆者の知り合いの園長は、この入力に悩みながら3日かかったと言っていました。
こども家庭庁の「経営情報の見える化」に関するHPや「オンライン説明会のアーカイブ動画」「令和7年4月、自治体オンライン説明会での主な御質問に対する回答について(FAQ)」なども参考にしながら、あるいは市町村の担当課にも相談しながら、大変でしょうが、なんとかうまく「経営情報の見える化」の入力を済ませていただきたいと願っています。
なぜならば、それが回り回って自分たちの公定価格の改善につながる可能性があるからです。
★「保育ナビWebライブラリー」保育のいまがわかる!Webコラム 吉田正幸の保育ニュースのたまご vol.129(8月1日号)で配信した記事です。
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