◆ 毎回、これからの変化のきっかけにつながるかもしれない保育に関する様々な事柄を取り上げながら、独自の視点から分析します。
「子ども人口密度」という考え方があります。国立社会保障・人口問題研究所の岩澤美帆・人口動向研究部 部長が試算しているもので、都道府県や市町村など一定の地域における「子ども人口」(主に0~14歳、0~4歳)をそれぞれ一定の面積(例えば都道府県別可住地面積)当たりの子ども数で捉えた指標になります。ちなみに、これを15(0~14歳、0~4歳などの歳児別)で割れば、1歳当たりの換算も可能です。
この「子ども人口密度」を試算することで、出生数や出生率といった従来の指標だけでは捉えきれない、子どもに関する地域特性が見えてきます。子ども・子育て支援や保育に関する地域の実態・実相が、従来とは違う観点から見える化されると言ってもいいでしょう。
全国知事会は2024(令和6)年8月に「少子化の観点から結婚や子どもの法的保護等を巡る現状と課題について考える研究会」を設置しましたが、その初会合で講師を務めた岩澤部長は、次世代の人口という視点で、1990年の出生数(0~4歳人口)と25年後の人口を比較しながら、その特徴について3つの県を取り上げて以下のように分析しています。
○ 宮城県
・ 出生率が低下、子ども数も減少
・ 生まれる子どもは少ないが、25年後の人口は同程度
(子どもの持ちやすさが課題)
○ 神奈川県
・ 出生率は低下、子ども数は微減
・ 生まれる子どもは少ないが、25年後の人口は増える
(転入に対する依存度が高い)
○ 高知県
・ 出生率は高いが、子ども数は減少
・ 生まれる子どもは多いが、25年後の人口は減る
(進学・就職時の転出が課題)
この3県の違いを見ただけでも、過去の出生率や出生数と25年後の子ども数や人口との間には、明確な相関関係のないことがわかります。出生率はわかっても、それぞれの地域にどれだけの子どもが存在するかはわからないということです。
一方、「子ども人口密度」という手法や考え方を活用すると、例えば「地域の子育て環境の実態」「保育施設や学校などの維持可能性」「将来の人口再生産力」などを浮き彫りにできる可能性があります。
上述した研究会で提示したレジュメの中で、岩澤部長は、子育て施策などに取り組む意義や考え方、心構えについて、「合計特殊出生率や出生数の変動を対策の効果と結びつけすぎないほうがよい」ことに加えて、「今後進む出生減に対する対応策も必要」だとして、「子ども関連サービス業の縮小、事業・予算の縮小、子どもの空間的過疎など、子育て環境の加速的悪化が懸念される」と指摘しています。
新しい出生率や出生数が公表されるたびに、一喜一憂するような状況が見られますが、「子ども人口密度」という視点からはこれまでの少子化問題とは違う景色が見えてきます。「子ども人口密度」の視点から、自分たちの地域の教育・保育施設の持続可能性や合併・事業譲渡、統廃合、閉鎖といった問題から、「子どもの空間的過疎」つまり一定の子ども集団が保障できるかできないか、通園可能なエリアかどうかといった問題まで、これまでリアルに見えてこなかった状況が見える化されるかもしれません。
少なくとも出生率や出生数だけに振り回されることなく、将来の子ども数や人口の見通しに基づいて、自分たちの地域特性を踏まえつつ、20~30年後の姿をどこまで描けるかを検討することが大切です。例えば、「子ども人口密度」の低い地域では、2040年モデルと言える「ハブ・サテライト型」保育供給などを目指す必要も出てくるでしょう。
その際、保育関係者にとっては、単に自分たちの持続可能性だけでなく、日常的に子ども同士がかかわれる空間や保護者同士が交流できる場といった関係性の密度も重要になります。
★「保育ナビWebライブラリー」保育のいまがわかる!Webコラム 吉田正幸の保育ニュースのたまご vol.146(4月15日号)で配信した記事です。
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