◆ 毎回、これからの変化のきっかけにつながるかもしれない保育に関する様々な事柄を取り上げながら、独自の視点から分析します。
少子化の進行と共に地域の子ども人口が減少し、幼稚園や保育所などが定員割れに陥り、事業継続さえ厳しくなってきつつあります。とりわけ、公立の幼稚園や保育所は、私立に比べて園児減が著しく、市町村の財政負担の問題もあって統廃合が加速しています。
それでは、このまま全国各地の公立施設は消え去っていくのでしょうか。そう単純な話ではないと思います。量的にもっと減っていくことは確かですが、姿形を変えても一定数は存在し続けるだろうと考えています。それどころか、私立の施設が公立に転換するケースも皆無とは言えないでしょう。
大学の世界では、厳しい状況に置かれた私立大学が公立化したケースが少なからずあります。2009(平成21)年に高知工科大学(高知県)が初の本格的な公立化事例だと言われています。これ以降、現在までに10校以上が公立化しています。
その背景には、私立大学の定員割れによる経営危機と同時に、大学がなくなることで若者や教職員などの人口流出(人口減少)が起こることに対する自治体の危機感があります。私大を潰さず公立化することによって、志願者が増えると言われています。なぜならば、学費が安くなるからです。公立のブランドイメージもあるでしょう。
事実、高知工科大学は、志願者数が私立最後の年(2008(平成20)年度)に745人であったものが、公立化した翌年度には5,800人を超え、現在でも高い水準を維持しています。入学者数も、大幅な定員割れだったものが、公立化して以降は100%を超えています。ただし、入試難易度(偏差値)も急上昇し、地元の公立大学でありながら、高知県内の高校生の入学シェアが低下したと言われています。
さて、話を幼稚園、保育所に戻しましょう。同じ公立とは言っても、幼稚園、保育所と大学とでは状況や規模が随分違いますが、それでも公立幼稚園・保育所の存在意義を発揮する可能性は少なからずあると考えられます。
人口減少地域では、私立の経営はかなり困難です。もちろん、公立はもっと厳しい立場に立たされていますが、公立を廃園したからといって必ずしも私立が生き残れることにはなりません。公立も私立も共倒れする可能性があります。
しかし、公立であれ、私立であれ、地域から保育施設がなくなってしまえば、そこで子育てすることは困難になり、若者の人口流出に拍車をかけることになります。仕事と子育ての両立を可能にする拠点がなくなるわけですから、高齢者施設をはじめとした地域の公的施設の人材確保にもマイナスの影響を及ぼします。つまり、地域に人が定着するためのインフラ機能が喪失することになり、ひいては地域の衰退につながっていきます。
そう考えると、何とかして公立を残すという選択肢が浮上してきます。あるいは、私立の公立化、つまり民設公営や公立移管ということが現実味を帯びてきます。もちろん、そんなに簡単なことではありませんし、何らかの規制改革や制度改革が必要かもしれませんが……。
一方、人口減少地域ではありませんが、例えば大阪府箕面市のような特徴的なケースもあります。同市は当初、公立幼稚園の全廃と公立保育所の民営化を打ち出したものの、その後、公立幼稚園を3~5歳児対象のこども園とし、保育所の3歳未満児は民営化するという方向が検討されました。それが現在は、公立幼稚園・保育所を公立の幼保連携型認定こども園に再編・統合し、まず2027(令和9)年度に幼稚園・保育所各1園を幼保連携型認定こども園に統合、2028(令和10)年度に同じく2園を1園に統合するというプランを公表しています。
これも1つのモデルケースと言えそうです。なぜならば、多くの自治体では、公立すべての維持は困難だが、全面的な民営化も難しい、けれども質の高い安定した保育機能や子育て支援機能は必要という状況を抱えた中で、いわば公立の数は減らしつつも、多機能・高機能の公立認定こども園を地域の拠点として活用するという手法が有効だと考えられるからです。
公立はかなり減るけれども、新たな状況に対応できる進化型の公立こども園が誕生する可能性もある。それが筆者の見解です。
★「保育ナビWebライブラリー」保育のいまがわかる!Webコラム 吉田正幸の保育ニュースのたまご vol.149(6月1日号)で配信した記事です。
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