◆ 毎回、これからの変化のきっかけにつながるかもしれない保育に関する様々な事柄を取り上げながら、独自の視点から分析します。
こども誰でも通園制度(乳児等通園支援事業)の本格実施が間近に迫ってきました。今年度に比べると、かなり多くの自治体が事業に取り組むことになりそうです。ただ、筆者の知る範囲でも実施内容は多種多様で、とても同じ制度とは思えないような状況が見られます。
具体的な例は以下に示しますが、ここまで実施内容に違いがあると、保護者はもちろんのこと施設・事業者にとっても戸惑うことが少なくないと思われます。もっと言えば、利用する当事者である子どもにとって、同じような育ちの保障が受けられるとは限らず、公平性の点でいささか懸念が残ります。
自治体によっては議会にかけなければならない関係で、現時点で詳細を述べるわけにはいきませんが、東京都内の某区では、国の制度に都独自の事業(多様な他者との関わりの機会の創出事業)を組み込むことで、理屈上は1か月に最大160時間まで利用することが可能になっています。実施に手を挙げている施設の多くは私立幼稚園で、実施スタイルは通常の利用定員とは別に定員を設定した一般型、利用する日時を固定しない自由利用が大半となっています。私立幼稚園が多いということもあって、同区全体の受け入れ見込みは2歳児が大半で、0・1歳児はかなり少ないのが実情です。
これに対して別の某区は、国の制度に都の事業を組み込みつつ、1か月の利用上限は30時間まで、施設の空き定員内で受け入れる余裕活用型が多く、利用形態は日時を固定した定期利用が基本となっています。上記の区とは逆に保育所が大半で、幼稚園は非常に少ない状況です。
さらに別の某区は、利用希望者を最大限受け入れることを目指すため、ほぼ国の事業を踏襲する形で上限10時間としています。ただ、都の事業に関しては、私立幼稚園を対象とした未就園児の預かり保育(週に1~3回、1回に2~3時間程度)を実施しており、都が昨年9月に0~2歳児の無償化を始めたことを踏まえて、月額4万4,000円を上限に区が補助するという実質的な無償化を実現しています。
いずれにしても東京都の場合は、昨年9月から0~2歳児の保育料を無償化したことから、こども誰でも通園制度及び多様な他者との関わりの機会の創出事業についても無償とする方針で、上記の区もすべて利用料は無償となります。
一方、福岡市は、月に最大40時間(週1回程度、1回4時間以上)まで利用できる「福岡市型」こども誰でも通園制度を2026(令和8)年度から実施する予定です。対象年齢についても、国の事業では生後6か月から2歳までですが、同市の場合は市から認定を受けた児童は3歳になる年度末まで利用できるとしています。
こうした状況を見ると、こども誰でも通園制度は国の事業と言いながら、市区町村によって利用上限時間も、利用者負担も、実施形態も異なっており、とても同じ制度とは思えないのが実態です。もちろん多くの市区町村は国の実施内容を踏襲するところが多いと考えられるため、これがこども誰でも通園制度の“標準”ということになるのでしょう。
けれども、必ずしも国の“標準”に合わせない市区町村があることも事実です。それどころか、国の“標準”とはかなり違う実施内容で取り組む市区町村が出てきたことにより、この制度で期待できる成果も同じかどうかわかりません。もっと言えば、月10時間の上限時間でどこまで子どもの育ちの保障ができるのか、30時間、40時間の利用を可能としている市区町村と比べた場合、果たしてどのような違いがあるのか、ないのか、といったことも気になります。
受け入れる施設・事業者にとっても、そのための保育人材の確保や安全・衛生面での配慮、内容の工夫など、前例のない取り組みだけに、手探り状態で対応することになります。その際、利用時間や利用者負担をはじめとした実施内容の違いによって、施設・事業者の経営面に与える影響も無視できません。
将来的に制度運用の見直しは避けられないと思いますが、こども誰でも通園制度の“標準”をどう捉えるのか、2026(令和8)年度の本格実施の行方が注目されます。
★「保育ナビWebライブラリー」保育のいまがわかる!Webコラム 吉田正幸の保育ニュースのたまご vol.142(2月15日号)で配信した記事です。
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