執筆:青山誠
事例:上町しぜんの国保育園
私たちの園では、夏休みに卒園児の小学1年生が園に遊びに来ます。たっぷり遊んだ後に、小学生たちとミーティングをして学校生活について聞いてみました。久しぶりの場所で、懐かしい顔に囲まれて、学校のあれこれについて子どもたちが喋り始めます。石上さんのエピソードを見てみましょう。
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卒園児17人に学校について聞いてみる。カプラ(平型の積み木)を10本用意して、学校が楽しいなら左へ、悩んでいるなら右へ、カプラをその本数だけ動かしてもらう。「楽しい」が全部なら、左へ10本、右へ0本。半分半分の気持ちなら左へ5本、右へ5本、というように。
○Mさん 8:2(楽しい:悩んでる)
日本語は楽しいでしょ。英語も楽しいでしょ(と1つずつカプラを持って楽しいにずらしていく)
○Iさん 10:0
こっち(悩んでる)はない、と10:0。
○Yさん 9:1
図工が嫌い。夏休みと昼休みが嫌。勉強したいから。
○Oさん 9:1
体育が嫌だ。日本語は好き。
(好きな授業と嫌いな授業って何が違うの?と聞いてみると)
先生がこわいとつまらない。算数の先生がこわい。
○Wさん 9:1
国語が嫌。先生がこわいというか、読むのがつかれる。
○Kさん 0:10
「楽しくない」がいっぱい。
○Sさん 10:0
学童は楽しい。アスレチックがある。
○Tさん 0:10
学童はつまらない。楽しいおもちゃがない、友だちがいない。
学童はクッキングも散歩もない、とのこと。プールでは飛び込みはダメ、折り紙は3枚までなど決まりごとが多い様子。
「そう、保育園のほうが自由」とのこと。「じゃあ学童やめて保育園きたら?」とほかの子からも声が上がり、「だからこういうふうに遊ぶ日をつくったんだよ」と返した。
「先生が怖い時はどうするの?」と聞いてみると、「なんにもしない」とのこと。保育園のおとなとはケンカしてたじゃんと言うと、「先生にはしない」「先生にはやりかえさないほうがいいと思う」とのこと。
「友だちが先生に毎日怒られてる」とMさん。ほかの子からも、「毎日怒られてる子がいる」「怒られるの見るから、怒られないようにする」とのこと。「保育園のおとなにも怒られてたでしょ」と聞いてみる。「うん」「おれは100回は怒られた」「100じゃ足りないでしょ」などと盛り上がる。
話していると、Yさんが「心の中の悪魔がいなくなった」と言った。「保育園でいっぱい遊んで飛んでったかね」と返して終わった。
わちゃわちゃ楽しかったし、久しぶりにみんなとおしゃべりした感じ。けれど1回しかないミーティングって難しい。連続してないからこそ、悩みに触りすぎてもその後が継続的に見えない。
怒られている人を見て、みんなも怒られないようにしている。それが学校という社会で生きる術なのかもしれない。だから先生という存在に対してなかなか触れないんだと思う。子どもの方から線を決めている。毎年このミーティングをすると、子どもを取り巻く環境にモヤモヤとする。本当にこのままでいいんだろうか。(石上記)

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新しい環境での楽しさや戸惑いが伝わってくるミーティングでした。語り合うことによって親しみのある関係をつなぎ直し、自分の気持ちを聞いてもらえてほっとしたり、前を向けたり。子どもたちの環境について私たちに何ができるでしょうか。小学生たちの背中に「大丈夫、いつでも待ってるよ、苦しくなったらまた話そう」と語りかけつつ、一緒に過ごした時間やミーティングで語り合った経験が子どもたちを支えてくれると信じています。
イラスト:ナガタヨシコ(https://www.instagram.com/nagata445)
<編集部より>
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執筆 青山 誠(社会福祉法人東香会 保育統括)
税込 2,970円(税別2,700円)
96ページ 26×18㎝
ISBN 978-4-577-81571-7 108-34

