執筆:青山誠
事例:上町しぜんの国保育園
前回に続いて、対話を通して「子どもと共に保育をつくる」ことの実際を紹介します。子どもと共に…という時に、遊びのアイデアをおとなはどこまで出していいのか、迷っていませんか。今回は保育者の石上さん(いっしー)が子どもたちと遊びの相談をした事例です。
午前中、部屋で4、5歳児たちと遊んでいた。Iさんが発泡スチロールの中に自分で作ったカニを入れている。「市場」とか「さばく」とか聞こえてくる。「Iさん 、保育園の近くの魚屋さん行ったことある?」「ない! いきたい!」「じゃあミーティングで話そう」と、5歳児でミーティングをすることにした。
石上「Iさんと前の部屋で話したんだけど、ほら、このカニあるでしょ。(発泡スチロールを持ってくる)楽しいこと思いついちゃってさ。前に保育園の子とお魚屋さん行ったのよ」
私が魚屋さんにいく寸劇をしようとしたところ、急にJさんが「わたし、さかながいいー!」と言って魚になりきり、「わたしもー!」「さめー!」と声があがりほかの子もそれに続いた。Iさんも「カニー!」とのこと。なんとミーティングの輪の中が、子どもたちがなりきった魚であふれたのだった。
「ほほー! こうなるか!」と私はすごく興奮した。ちょっと子どもたちの動きを見てから、
石上「ははは、魚になりたい! 今の見てて水族館の大きな水槽みたいだなーと思った」
私は紙に大きな水槽の絵を描いた。
「それがいい!」
Iさん「うーん、いやだな」
石上「Iさん、嫌か。そうそう話そうと思ってたのは、保育園の近くに魚屋さんがあってね。前に太刀魚っていうのを見せてもらったのよ。だから今日も見せてくれないかなーって。見に行く?」
「いくー!!」
何人かがまた魚になる。
石上「おっけー! おっけー! じゃあ魚にもなって、魚屋さんにも行って、というのはどう?」
子どもたちは興奮した様子。1回座ってもらって「何の魚になりたい?」と聞いてみた。
「にんぎょ」「カニ」「さかな」「さかなにならない」「えさをあげたい」「しいくいんだ!」「おきゃくさん」「くじら」「ザリガニ」、いろいろあがる。そして「いっしーは?」と聞かれたので、「チケット配るかな」と答えると、子どもから「おきゃくさんよびたい!」とまたアイデアがあがる。
子どもたちは盛り上がっていたので、この勢いで明後日に「本番」をやることにした。そしてミーティングのあと水族館の準備を始めた。
こうなるのかとかなりワクワクした。Iさんの遊びをもとに広げたかったのだけど、思いのほか相乗効果で話がコロコロと進んでいった。そしてミーティングのあとの準備では、「魚への変身道具づくり」なるものがかなり盛り上がった。遊びながらもう半分本番みたいになったらしい。うん、やっぱりミーティングは楽しまないとダメだと痛感した。(石上記)
子どもたちはもちろん、保育者である石上さんも遊びの中に混じっているのがわかります。対話というと身構えてしまうかもしれませんが、子どもと遊び、暮らしながら、楽しくおしゃべりするところが「はじめの一歩」です。
事例では、保育者からもどんどんとアイデアを出しています。子どもにとって「本音を言っていい人」であるならば、おとなも意見を言っていいと思います。子どもだけでは思いつかない内容もあり、おとなからの提案が遊びを弾ませていくきっかけになることも多いのです。石上さんの提案に対して、子どもから「うーん、いやだな」とちゃんと断られていますね。子どもにとっては保育者の意見も「たくさんの中の1つ」として受け取られているのでしょう。
イラスト:ナガタヨシコ(https://www.instagram.com/nagata445)
<編集部より>
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