◆ 毎回、これからの変化のきっかけにつながるかもしれない保育に関する様々な事柄を取り上げながら、独自の視点から分析します。
こども家庭庁がこのほどまとめた「こども誰でも通園制度の実施状況等について」によると、利用認定を受けた子ども数は約5.3万人で、このうち実際に利用した人数は約1.2万人にとどまっていることがわかりました。0~2歳児の未就園児が120万人近くいることを考えると、実利用人数はその1%に過ぎないことになります。本格実施された年度当初の状況とはいえ、想定を大幅に下回っていることは間違いないでしょう。
「こども誰でも通園制度」(以後、『誰通』と省略)は、多くの保育関係者の期待や不安を背負いながら、2026(令和8)年度から給付事業として始まりました。この新しい事業は、2023(令和5)年度に行われた「保育所の空き定員等を活用した未就園児の定期的な預かりモデル事業」や、2024(令和6)・2025(令和7)年度の2年間にわたって取り組んだ試行的事業を経て、本格実施に至りました。
メディアでもしばしば取り上げられ、市区町村も子育て家庭に周知を図ったはずですが、対象となる未就園児の1%にさえ達しない利用状況となりました。1・2・3号認定子ども以外の子ども(0~2歳児の未就園児)にも育ちの機会を提供する事業として、大きな期待を担ってスタートしたにもかかわらず、残念な結果となってしまいました。
その要因はどこにあるのでしょうか。3歳未満の乳幼児を抱える在宅子育て家庭にとって、それほど魅力のない事業で、そもそもニーズがあまりなかったのでしょうか。筆者はそうは考えていません。
いろいろな要因が絡み合っていることは確かですが、主な要因としては、① 事業を担う保育人材が十分に確保できなかった、② 月10時間までという利用時間が不十分であった、③ 事業を運営するための給付額が施設・事業者にとって十分でなかった、④ 通常保育の利用定員が一杯で未就園児を受け入れる余裕のない施設が多かった、⑤ 市区町村がこの事業に十分な理解がなく消極的であった、といったことなどが考えられます。
それは、利用認定子ども数が約5.3万人、実利用人数が約1.2万人と、4倍以上の開きがあることからもわかります。1~3号子どもの場合、認定子どもの大多数が実利用につながっていますが、『誰通』の場合は、利用希望がありながら実際には利用しなかった(利用できなかった)家庭が少なからずあったことを物語っています。
さらに、今回の調査によると、平均利用時間は0歳児が5.9時間、1歳児が6.2時間、2歳児が7.3時間となっており、どの年齢においても月10時間の利用上限時間よりかなり少なくなっています。この利用時間についても、月10時間は必要なかったのか、それとも施設側の受け入れ体制上、上限まで利用できなかったのか、あるいは定期利用したくても10時間では逆に不十分であったのか、様々な可能性が考えられます。
ちなみに、利用可能時間については、十分な提供体制を取れない自治体に対して、経過措置として2026(令和8)~2027(令和9)年度は自治体が条例を定めることで、3時間以上10時間未満の間で設定が可能とされています。その結果、2026(令和8)年度は月3時間が20自治体、4時間が4自治体、6時間が2自治体となっています。月3時間というのは、利用者にとって使い勝手の悪い時間であり、『誰通』の成果が上げられるとも思えません。それなら一時預かりを利用するほうがましということにもなりかねません。
筆者が地方版子ども・子育て会議等でかかわっている自治体のケースを見る限りでは、需要量の見込み(利用ニーズ)の把握が十分でなく、提供体制の確保(供給確保方策)も後追いのようになっていると感じられました。恐らく、多くの自治体でも同様の状況にあるか、もっと粗雑な対応しかしていないケースもあるのではないかと想像されます。そこに、施設・事業者側の『誰通』に対する理解不足が重なって、利用しづらい制度運用になってしまった側面もありそうです。
いずれにしても、『誰通』が期待される本来の役割を果たすためには、何が円滑な利用のボトルネックになっているのかを探り、利用の促進・拡大に向けた改善策を講じる必要がありそうです。
★「保育ナビWebライブラリー」保育のいまがわかる!Webコラム 吉田正幸の保育ニュースのたまご vol.155(9月1日号)で配信した記事です。
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