執筆:青山誠
事例:上町しぜんの国保育園
前回のエピソードでは、3歳の子の友だちとの間での気持ちの揺れ動きについて書きました。今回も3歳の子の葛藤を見てみましょう。私たち上町しぜんの国保育園では0歳から5歳児まで、異年齢グループで過ごしています。自分よりも大きい子とも、小さな赤ちゃんとも日常的にかかわります。そんな中で子どもたちは「大きくなる」ことをどのように感じているのでしょうか。
最近、Tちゃんはよく「おねえさんだから」と言う。例えばお昼ごはんを食べている時。まだ残ってるのにおかわりに来た子に、「全部食べてから来てほしいなー」と言うと、勢いよくTちゃんが「Tちゃんはおねえさんだからのこさないよ! ぜんぶたべるよ!」と言う。
ある時には、散歩先で「もう帰るよー」と声をかけると、「やだー」と帰らない子もいれば、トコトコと駆け寄ってくる子もいる。その中でTちゃんは私のほうに駆け寄ってきながら、「Tちゃんはおねえさんだからかえるよ」と言っていたりもした。
11月17日、お昼寝の時間。最近Tちゃんは、Kくんか、Aちゃんの隣で寝たいと言う。ここ数日はAちゃんと寝たい気分らしく、この日も隣にしていた。ふと見るとAちゃんの背中をトントンしていた。Aちゃんが寝たのを確認して、満足そうに横になる。そのあとにそっと聞いてみた。
「Tちゃん、Aちゃんのことトントンしていたね。トントンしたい気分だったの?」
ううん、と小さく首を振る。
「それともAちゃんよりもお姉さんだから?」
うん、と頷く。
おねえさんだから、と言うTちゃん。Tちゃんにとって、お兄さんやお姉さんって、よく一緒に遊ぶUさんあたりのことを思い浮かべているのだろうか。お兄さんお姉さんというとミーティングや造形をやれる子たち? そういえば前にTちゃんが、「Tちゃんはおねえさんだから、ミーティングできるんだよ」と言っていたことがあった。それと、1年くらい前にIくんやRちゃんが「もう4さいだからミーティングできるんだよ!」と言っていた。なんとなく、それと似ているのかな、と思う。きっとTちゃんにとってもあの頃のIくんたちも、ちょっと特別なことができるお姉さんお兄さん(4歳)になれる(なっている)のがうれしいような、誇らしいような気持ちなのかなと思う。そういえば「おねえさんだから」と言うTちゃんは、ちょっと誇らしげにも見える。
「おねえさんだから」と言ってTちゃんにとっていいこと(?)をやろうとするTちゃんは、我慢して気持ちを抑えていたりしないだろうかと心配にもなる。見ている限り我慢しているようには見えないが、Tちゃんの気持ちを大切にしながら過ごせたらと思う。(宮本記)
前半部分のエピソードからは、保育者が求める姿(ご飯は残してほしくない、声をかけたら集まってほしい)に沿うことが「大きくなること」と、Tちゃんが思っている様子も感じられます。宮本さんも書いている通り、ここは保育者として重々気を付けないと、子どもたちが「大きくなる」気持ちを、ある意味おとなが利用して、おとなにとって都合のいい姿を子どもに押し付けることになりかねません。そうなってしまえば、この先もずっと子どもたちは自分の存在を他者評価に委ねていくことになりかねません。保育というのはこうした意味で、その後のその子の人生を左右しかねない、大きな責任を伴っているのです。
一方で、Tちゃんの行動のすべてがおとなの思惑を忖度して動いているわけでもなさそうです。エピソードを見ると、大きい子たちへの憧れからその振る舞いを真似したり、小さい子への自然な慈しみからケアとも呼べる行動をしたりしている様子も見られます。こうした姿を過度に褒めてしまえば、それもまた他者評価依存へとつなげてしまいかねません。子どもと一緒に暮らしながら、大きくなることへの期待とうれしさも、自然に受け取っていけたらと思います。
イラスト:ナガタヨシコ(https://www.instagram.com/nagata445)
<編集部より>
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