◆ 毎回、これからの変化のきっかけにつながるかもしれない保育に関する様々な事柄を取り上げながら、独自の視点から分析します。
独立行政法人福祉医療機構が先ごろまとめた「2024年度保育所・幼保連携型認定こども園の経営状況について」のレポートを読むと、今後の園運営のあり方を考える上でいくつかの大事な示唆を得ることができます。
レポートの詳細は、同機構のホームページを見ていただくとして、ここではその中から特徴的なデータを見ながら、少子社会における保育施設の課題と可能性を考えてみたいと思います。
なお、その際の前提として、福祉医療機構の調査は、融資先を対象としており、そのほとんどが社会福祉法人であるということを附記しておきます。
さて、経営状況の調査によると、保育所や幼保連携型認定こども園に共通したポイントとして、保育所、認定こども園共に利用定員に対する在籍園児の割合である利用率は減少し、保育士等の人件費は上昇しているにもかかわらず、サービス活動増減差額比率(いわゆる黒字)は上昇していることがわかりました。赤字施設の割合が減っているということです。
赤字施設の割合を具体的に見てみると、保育所の場合、5年前の2019(令和1)年度に21.6%であったものが、2022(令和4)年度に26.7%まで増えたのですが、その後、2023(令和5)年度に23.1%、今回調査の2024(令和6)年度に18.0%と下がっています。
認定こども園の場合も、5年前の2019(令和1)年度に13.3%であったものが、2022(令和4)年度に17.0%まで増加したものの、その後は2023(令和5)年度に15.1%、今回調査の2024(令和6)年度に13.0%と低下しています。
その一方で、受入れ児童数は減少しており、利用率を見ると、保育所は2019(令和1)年度の99.7%から2024(令和6)年度の96.6%へ、認定こども園は2019(令和1)年度の97.9%から2024(令和6)年度の93.5%へと一貫して減り続けています。
しかも、この間、保育人材確保のために処遇改善が図られ、人件費は上がり続けています。調査によると、保育所の1人当たり人件費(年額)は前年度より28.5万円高い467.6万円、認定こども園は29.8万円高い460.5万円となっています。
簡単に言えば、保育所も、認定こども園も、園児が減り続ける一方、人件費は高騰し続けているにもかかわらず、赤字施設が減って黒字施設が増えているということです。これは、利用児童単価の上昇つまり公定価格の引き上げにより、収益性を表すサービス活動増減差額比率が上がっているためです。
要するに、園児が減る一方で人件費が膨らんでも、公定価格が上がり続けているため、結果として赤字施設が減っているということになります。特に2024(令和6)年度は、処遇改善等加算が10.7%増と大幅に引き上げられたことから、利用児童単価(児童1人1か月当たりサービス活動収益)も上昇し、経営状況が改善したと考えられます。
もう1つの特徴は、黒字施設のほうが、処遇改善等加算Ⅱ(保育所は加算Ⅰも)の算定率が高く、療育支援加算や障害児保育加算なども算定率が高い傾向が見られるということです。保育所より認定こども園のほうが赤字施設の割合が少ないのも、一般的に認定こども園のほうが各種加算を受けているからではないかと考えられます。
これらのデータから推し量ると、多くの施設で今後さらに園児が減っていく一方で、人件費は当面上がり続けると予想されるなかで、処遇改善をはじめとした公定価格をどこまで引き上げられるかが1つの大きなポイントになります。
ただ、しばらく処遇改善が図られるとしても、公定価格がどこまで高い水準で設定されるかは未知数です。
そう考えた時、療育支援加算や障害児保育加算などの障害児対応に加えて、こども誰でも通園制度や医療的ケア児・外国籍の子どもへの対応、児童発達支援事業、地域子育て支援拠点事業、こども食堂などの多様なニーズに対応した事業をどこまで拡げられるか、つまり多機能化という視点も重要になりそうです。
★「保育ナビWebライブラリー」保育のいまがわかる!Webコラム 吉田正幸の保育ニュースのたまご vol.148(5月15日号)で配信した記事です。
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