◆ 毎回、これからの変化のきっかけにつながるかもしれない保育に関する様々な事柄を取り上げながら、独自の視点から分析します。
厚生労働省がこのほど公表した令和7(2025)年人口動態統計月報年計(概数)によると、昨年1年間の出生数は前年より1 万4,937 人少ない67 万1,236 人、合計特殊出生率は0.01ポイント低い1.14であることがわかりました。
一昨年(2024(令和6)年)の出生数が前年より4万人あまり減ったのに比べると、減少の程度こそ緩やかになったものの、10年連続で過去最低を更新した出生数・合計特殊出生率の減少傾向を反転させるまでには至っておらず、依然として厳しい少子化が続いています。
しかも、今回のデータを都道府県別に見ると、日本全体の少子化傾向とは違った側面が浮かび上がってきます。保育関係者にとっては、マクロな動向もさることながら、自分たちの地域が今後どうなっていくかを丁寧に見て、少しでも早めに対応策を講じていくことが求められます。
令和7(2025)年人口動態統計月報年計(概数)で示された都道府県別の出生数を前年と比べてみると、次のような特徴が明らかになりました。
◇ 47都道府県のうち出生数が増加したのは4都県(東京都、石川県、富山県、香川県)
◇ 出生数の減少率ワースト10は、島根県▲7.8%、青森県▲7.1%、山形県▲6.8%、 長野県▲6.1%、山口県▲5.5%、大分県▲4.9%、岐阜県▲4.9%、和歌山県▲4.7%、 岡山県▲4.6%、福島県▲4.6%(全国平均は▲2.2%)
◇ 首都圏でも東京都だけが出生数が増加(埼玉県、千葉県、神奈川県は減少)
◇ 東北・中国地方の減少が深刻(青森県▲7.1%、山形県▲6.8%、島根県▲7.8%、 山口県▲5.5%)
これらのデータに社会移動(転入・転出による人口の増減)を加味すると、今後の少子化の進行や地域差を推測する手掛かりが得られます。
総務省の2025年人口移動報告によると、転入超過は東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、福岡県、滋賀県の7都府県のみで、それ以外の40道府県は転出超過となっています。社会移動は、比較的若い世代が多いことを考えると、若年層や子育て世帯が流入する地域か、逆に流出する地域かによって、その後の出生数の動向に大きな違いが生じると考えられます。
理屈の上では、「出生数増加×社会増」「出生数増加×社会減」「出生数減少×社会増」「出生数減少×社会減」という4つの地域パターンが想定できます。
このうち、「出生数増加×社会増」は、東京都だけですが、その東京都も前年より出生数が増加したのは2024(令和6)年~2025(令和7)年であって、2023(令和5)年~2024(令和6)年は減少しています。「出生数増加×社会減」は石川県、富山県、香川県の3県です。「出生数減少×社会増」は、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、福岡県、滋賀県の6府県となっています。
言い換えると、それ以外の道府県は、程度の差こそあれ「出生数減少×社会減」という厳しいパターンに分類されます。特に、青森県や秋田県、山形県、島根県、高知県、山口県などは、今後さらに厳しい状況に見舞われる可能性があります。
「出生数減少×社会減」が著しい地域では、利用定員の引き下げや多機能化(一時預かり、こども誰でも通園、地域子育て支援関連事業、児童発達支援など)といった対応だけでなく、統廃合や休廃園、合併・事業譲渡などが避けられません。
一方、「出生数増加×社会増」や「出生数減少×社会増」の地域であっても、園運営を取り巻く状況は厳しさを増していくと予想されます。特に、保育人材の確保・定着が大きな課題となりますが、さらなる処遇改善や職場環境の整備(職員の業務省力化、有給休暇の取得保障など)といった面で、1法人1施設や小規模施設は経営的に苦しい状況に置かれる可能性があります。
しかも、これは都道府県レベルのデータに過ぎません。実際には、政令市や中核市、県庁所在市、一般市、中山間地域・過疎地域を抱える市町村によって事情は大きく異なります。改めて自園のある地域の様々な特性・特徴を知って、今後の対応方策を検討することが求められます。
★「保育ナビWebライブラリー」保育のいまがわかる!Webコラム 吉田正幸の保育ニュースのたまご vol.150(6月15日号)で配信した記事です。
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