◆ 毎回、これからの変化のきっかけにつながるかもしれない保育に関する様々な事柄を取り上げながら、独自の視点から分析します。
日本でも保育の質に関する関心が高まり、その評価のあり方についても研究が進みつつあります。けれども、残念ながら全国レベルの調査や質の評価・向上を図る機関はないのが実情です。
こうした取り組みは諸外国でもそれほど多いわけではないようですが、それでもイギリスのOfsted(教育水準監査局)やニュージーランドのERO(教育評価局)、オーストラリアのACECQA(幼児教育・保育品質保障庁)など、国レベルの評価機関がいくつか存在します。
また、デンマークには、教育省の管轄に独立機関「デンマーク評価研究所(EVA=The Danish Evaluation Institute)」があり、個々の保育施設の評価はしませんが、保育・教育の質の向上に関する調査・研究や開発プロジェクトの実施、情報発信などを行っています。
このEVAは、2020年頃から公立幼稚園の質について初の全国調査を行い、その後、2023年に0~2歳児の保育と保育施設の質、2025年に3~5歳児の保育と保育施設の質について全国調査の結果を発表しました。
2023年の調査結果に関しては、筆者も2024年に海外視察の一環としてEVAを訪問し、0~2歳児についての調査結果をはじめ、デンマークの保育の質に関するアプローチをレクチャーしてもらいました。
その後、3~5歳児の保育や保育施設の質に関する調査結果が公表されました。その概要のごく一部を以下に示しておきます。
◇ 国の基準に照らし合わせた総合的な学習環境の評価
- 理想的な「良い質」 : 全体の9%
- 最低限のラインを満たす「十分」 : 63%
- 見直しが必要な「不十分」 : 28%
レポートでは、全体の9割が「十分」またはそれ以下の評価となっており、家庭環境の格差を保育園の力で埋めるまでの教育的アプローチが十分にできていない現状がある、と分析しています。
◇ 関係性(人間関係)の評価(良い20%、十分45%、不十分35%)
- 職員と子どもの関係性 : 「良い」が62% (登園時に名前を呼んで笑顔でハグをするなど)
- 受容的・敏感なかかわり : 「十分」が17% (言い換えると、子どもの言葉やサイン、感情を敏感に察知して共感したり、適切に応答するかかわりは不十分)
- 叱責・咎め : 「不十分」が17% (子どもに対して日常的に「しばしば」「ほぼ常に」否定的な叱責や咎めを行っている)
◇ 屋内環境(良い5%、十分60%、不十分35%)
- テーマ性のあるコーナーの不足 : おままごと、ブロック、お絵描きといった「テーマ別の明確に区切られた遊びのコーナー」が十分に設置されているクラスはわずか5%
- 準備不足 : 遊びのコーナーが「子どもたちがすぐに遊びを始めて持続できる状態に、魅力的にセッティングされている」クラスは0%
- 休息や静寂の場所がない : 68%のクラスで、子どもが騒がしい集団から離れて1人で静かに過ごしたり、読書や休憩をしたりできる「静かなエリア(ロー・アクティビティ・ゾーン)」が設置されていないか、設置されていても機能していない
なお、これらの評価は、デンマーク独特の評価スケールKIDSを使って、「関係性(人間関係)」「遊びと活動」「屋内および屋外の物理的環境」の3分野(57項目)を5段階で評価したものです。評価のスコアは、「卓越している」「良い」「十分」「不十分」「極めて低い」という5段階の品質カテゴリーに分類して実施しています。
紙数の関係で丁寧な説明ができませんが、調査結果の善し悪しよりも、こうした結果を踏まえて何をどのように改善・改革すればいいのか、国や自治体にとっての課題は何か、個々の保育施設の課題は何かを探る手掛かりとして受け止め、質の向上につなげようとしているところが、デンマークの取り組みに学ぶところではないでしょうか。
★「保育ナビWebライブラリー」保育のいまがわかる!Webコラム 吉田正幸の保育ニュースのたまご vol.151(7月1日号)で配信した記事です。
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