コラム

2026 コラム5 ここあいてるよー!(Oさん、3歳)

執筆:青山誠 
事例:上町しぜんの国保育園

子どもたちとの対話は、本音を出せる環境から始まります。子どもたちが保育者の顔色を見ずに、のびのびと過ごせる環境があってこそ、子どもたちの声が保育の場に生き生きと響いて行きます。ただそうした環境があっても、いつでも子どもは「本音」を出しているのでしょうか。保育者の大川さんが3歳児のOさんを見守っている場面を見てみましょう。

3歳というと思いっきり自分の気持ちを出したり、相手にぶつけてみたりというイメージもあります。でも、この時のOさんのように言いたいことを心に溜める場合もあります。子どもは自由闊達であると同時に、心の機微をこんなにも繊細に生きています。「本音を出す」とはいつでも言葉でありったけの気持ちを言うことではありません。子どもの心は表情や態度やちょっとした呟きにあらわれていて、保育者としてはそれらにいつでも耳を澄ましていたいものです。
一方で、このOさんのような場面では、保育者はどこまで介入していいのか迷います。子ども同士の関係性にでしゃばりすぎてしまえば、子どもたちの気持ちや関係の機微を追い越してしまいかねません。この場面での保育者の大川さんは、Oさんに心を寄せながらも、すぐに介入しようとはせずに、自身の心の内に溜めています。このエピソードを見ると、保育でよく言われる「待つ」というのが、とても集中のいる、積極的な行為だと気付かされます。ぼーっとして何もしないことではなく、常に子どもの心を自身の心に溜めていることこそ、保育者の「待つ」なのですから。
Oさんは心に溜めた気持ちをいつか伝える機会はくるのでしょうか。それともさらっと流れて、また新しい出来事に出会っていくのでしょうか。保育における「待つ」はこうして、言葉の前にある、子どもとの対話の連続です。



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